膝痛の患者様を毎日見ている中で時々困ってしまうことがあります。
それは、『膝全体が痛いです』と言われてしまうことです。
確かに患者様の気持ちになってみると、膝が痛いがすべてなのですが、我々、整形外科Dr.からするとひざの中でも内側が痛いのか、外側が痛いのか、後ろ側が痛いのか、前が痛いのかで全然違うのです
また、膝が痛くなるキッカケがあったのか、徐々に痛くなったのか。ここも診断のポイントとなってきます。
この記事では、読者の患者様が整形外科を受診した際に、上手にDr.に症状を伝えることができるように、膝痛の表現方法を紹介します。
膝の構造を知ろう!
専門用語を知っている必要性はないですが、膝の構造への理解があれば、医師からの説明の理解度も増すはずです。
骨の構造
モモの骨である大腿骨、スネの骨である脛骨、膝のお皿である膝蓋骨があります
靭帯の構造
内側を支える内側側副靭帯、外側を支える外側側副靭帯、前後に安定性をもたらす前十字靭帯・後十字靭帯
膝蓋骨と脛骨をつなぐ膝蓋靭帯
筋肉の構造
膝を伸ばす大腿四頭筋、膝を曲げるハムストリング
半月板
大腿骨と脛骨に挟まれて、膝のクッションの役割を果たす半月板
→内外側に存在し、損傷した側に疼痛が出現します。
膝を構成する構造は他にもたくさん存在しますが、これだけ知っていれば十分です。もう少し詳しく記事を書いているので是非チェックしてみてください。膝の構造の理解が進み、病気への理解が進みはずです。

STEP1 いつから痛い?原因はあったの?
まず、STEP1としていつから痛いのか、そしてきっかけがあったのか。この二つが重要になります。
まずは、いつから痛いのかを伝える方法をお伝えします。〇月〇日の何時くらいとはっきり疼痛の始まりがわかるのであればよし、だんだん痛みが出てきて正確な日時がわからないのであれば、何年前から痛いのか。20✗✗年から痛いなど、できるだけ具体的にわかるとなおいいと思います。
続いて、きっかけを伝える方法です。階段で着地した際に、重いものを持とうと力を入れた瞬間に、ジムでスクワットをしてしゃがんだ際に。いろいろあると思います。きっかけがあると、疼痛の原因を詮索するヒントになるので覚えておいてもらえるといいと思います。ただ、はっきりとしたキッカケがないのも、立派な所見となるのでそれはそれでお伝えしていただけるといいと思います。
STEP1の例
・半年前に、階段を踏み外した際に痛み出した
・10年前くらいから、キッカケなく段々痛くなった
・〇月〇日に筋トレでスクワットをした際に疼痛出現した
このように伝えるとわかりやすいです
STEP2 どうすると痛い?
続いて、STEP2です。どうすると痛いのかを上手に伝えてみましょう。
普段から痛みを感じている方は意外と意識しておらず、診察室でいきなり聞かれると困ってしまう方も多いはずです。以下に痛くなりやすいよくあるパターンを書きますので参考にしてみてください。きっと、当てはまる瞬間があるはずです。
STEP2の例
・階段昇降時
・しゃがんだ時
・正座をするとき
・朝起きたとき
・長時間座った後に立ち上がる瞬間
こんなところでしょうか。カルテをさかのぼって患者様の訴えで多いものを書いてみました。
痛みとは少し違いますが、引っ掛かり感がある、膝がロックする感じがあるというのは、重要な半月板損傷のサインなので、もしそのような症状がある場合はぜひ教えてください。
STEP3 膝のどこが痛い?
続いて、STEP2です。膝のどこが痛いのかはどう表現するとよいのでしょう?おおまかに、内側、外側、前、後ろ、これがわかるといいと思います。全体が痛い場合もあると思いますが、疾患を診察室で絞るのが難しくなってしまいますので、普段から膝のどこが痛いのかをはっきりさせておくとよいと思います。疼痛部分に応じてどんな疾患があるのかも紹介させていただきますので是非参考にしてください。
膝の内側が痛い
膝の内側が痛い場合はどんな疾患が考えられるのでしょうか。
1 . 内側半月板損傷→内側の関節面に沿った疼痛
2 . 内側の変形性膝関節症→内側の関節面に沿った疼痛
3 . 鵞足炎→関節面より下側の疼痛
4 . タナ障害→関節面より上側の疼痛
これらの考えられる疾患があるので痛い部分を正確に表現できるように病院に行く前に確認できるといいでしょう。
膝の外側が痛い
膝の外側が痛い場合はどんな疾患が考えられるのでしょうか。
1 . 外側半月板損傷→外側の関節面に沿った痛み
2 . 外側の変形性膝関節症
3 . 腸脛靭帯炎→大腿の外側部分に疼痛
膝の前が痛い
膝の前が痛い場合はどんな疾患が考えられるのでしょうか。膝の前の部分が痛い症状は色々な損傷に共通して生じます。anterior knee pain(AKP)と言われ、診断は多岐にわたり、しばしば確定診断が難しいことがあります。
1 . 四頭筋腱炎→膝蓋骨の上に痛みがある
2 . 膝蓋腱炎→膝蓋腱部分に疼痛
3 . その他→膝の前面痛で半月板損傷から変形性膝関節症まで多岐にわたる
膝の後ろが痛い
膝の後ろが痛い場合はどんな疾患が考えられるのでしょうか。
1 . 内側・外側半月板の後節損傷→後ろの中でも内側、外側に痛みが限局
2 . 膝関節の拘縮→膝の後ろ全体が伸ばされたときに痛い
3 . ベーカー嚢腫→内側の後ろが痛い
膝痛の表現方法まとめ
こんな感じで表現しよう
- いつから痛いか → 日付・年数・きっかけ
- どうすると痛いか → 階段、しゃがみ、正座、朝の動き、長時間座後
- どこが痛いか → 内側・外側・前・後ろ
いかがでしたでしょうか?膝痛は、痛む場所やきっかけ、痛み方を整理して伝えるだけで、医師との診察が格段にスムーズになります。今回ご紹介した方法を参考に、次回の受診時にはぜひ具体的に症状を伝えてみてください。膝の痛みへの理解が深まることで、治療や改善への第一歩になるはずです。
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